「レイカディア大学」をご存知ですか

本稿は自己紹介の頁に掲載していたものを 報告のひとつとして再掲載するものです。 今回の掲載にあたり 追記を加えました。
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 今年(2003年)10月から大学生になりました。滋賀県にある「レイカディ ア大学」という学校です。レイカディア(LACADIA)とは、湖のLAKEと (ギリシャ語の)理想郷という意味のALCADIAを併せた造語だそうで、私に ふさわしい格調の高さを感じていただけるでしょう。定年退職後のいい年こいたジ イサンがいまさら大学でもあるまい、という冷やかしの声が聞こえてきます。 しかし、いい年こいた年寄りを集めているという点で、全国的に注目を集めている のだそうです。 そこで、この学校がどんなものなのかを少し紹介させていただくことにします。
1.建物の概観:    まずは建物の外観を眺めて雰囲気をつかんでもらいましょう。   学校は草津市の「滋賀県立長寿社会福祉センター」の中にあります。このセン   ターは10年前に出来たそうです。この近くにある県立図書館へは定期的に通   っているので、通りすがりに眺めてはお年寄り相手にしては不便な所に無駄な   建物を作っているもんだ、と嘆いていたものでした。この夏、たまたま講師を   務めたホームページの作り方セミナーの会場がここだったため、この施設の利   用度が意外にも高いことを知りました。レイカディア大学がここにあることを   知ったのもこの夏でした。この建物には滋賀県の社会福祉協議会が入っており、   社会福祉関連の各種セミナーがかなり高い頻度で行われています。若い人向け   の介護セミナーやお年寄り向けの相互扶助セミナーなど、しばしば建物内が混   み合うことがあります。レイカディア大学の運営はこの社会福祉協議会が担当   しています。     laca01.jpg        レイカディア大学正面                      laca02.jpg                          大学の中庭 2.授業風景:    授業は、必修講座と選択講座があります。   必修講座の授業は、通常、扇状に広がった階段式の大教室で行われます。   およそ200人が月3回ここに集まり、まずは校歌の斉唱で始まります。その   後、さまざまな分野の権威者からの講義を拝聴します。ときには校外授業もあ   ります。11月には大津市の伝統芸能会館で狂言の鑑賞がありました。   選択講座は・園芸・陶芸・生活科学・文芸・スポレク(スポーツ・レクリエー   ション)の5学科があります。私は陶芸学科を選びました。陶芸学科では信楽   焼きを習っています。陶芸以外は1日づつ2回の講義・実習がありますが、陶   芸は作品の処理の関係で2日連続して通学します。      laca03.jpg        大教室での講義                      laca06.jpg                          校外学習(狂言)
3.授業内容:    この学校は2年制です。各学年とも必修講座は年間132時間(毎月3日間   )、選択講座は年間72〜88時間(陶芸学科は窯焚きの当番があるので毎月   3日間程度の見込み)です。   必修講座の学習領域としては(パンフレットから抜き書きしてみると)・人間   理解・郷土理解・社会参加・学校行事です。午前・午後各1テーマ2時間づつ   の講義があります。   今年(2003年)10〜12月の講義をいくつか拾ってみます。    ・「愛を歌う」:プロの(美人)声楽家による独唱鑑賞、校歌の指導    ・「本との出会い」:滋賀県立図書館長による図書館の利用法    ・「狂言塾」(校外学習):和泉流狂言師による狂言の鑑賞の仕方    ・「芭蕉さんに教えられること」:滋賀県俳文学研究会会長による芭蕉の句     の鑑賞    ・「高齢者の学びと地域貢献」:滋賀大学副学長による地域活動のあり方に     ついて    ・「琵琶湖の風景」:成安造形大学学長による琵琶湖の風景の楽しみ方    選択講座の内容は、学科毎に違いますが、陶芸学科では「作陶」の実習が中   心です。   陶芸の先生(3人)は信楽焼で著名な方のようです。(私は陶芸についてはズ   ブの素人なので、「ようです」という頼りない言い方しかできません)   作陶の先生は、天皇陛下から賞状をもらったほどの大家ですが、器用な職人に   なるよりも芸術家を目指せ、と気宇壮大な意気込みを語ってくれます。   (私は、蕎麦打ちに使う道具を揃えたいという程度の低い目標しか描いていま    せん。しかし、先生の話によれば、芸術家の資格とは「・頭は悪くてもよい    ・他人が認めてくれなくても自分がいいと思うものを作る気概をもてばよい    」というようなことらしいので、萎縮するまでもないと納得しています。)      laca05.jpg         釉薬の講義                      laca04.jpg                         作陶の実習
4.授業料:    年間12,000円です。去年までは10,000円、何年か前までは無料   だったそうです。他に選択講座で使う材料費(粘土など)の実費が必要です。   この程度なら私のような貧乏人でも大臣折衝に苦労することはありません。大   学の運営にはかなり税金を使っていることでしょうから、ありがたいと感謝し   なければならないでしょう。   惜しむらくは、JRなどの学割の恩恵が受けられないことです。
5.大学の沿革:    今年(2003年)10月に入学した私は26期生ですから、大学の設立は   25年前(1978年)になります。25年前といえば、「さきがけ」の党首   などで名を馳せた武村正義さんが滋賀県知事を務めていた時期です。武村さん   は1974年に全国最年少の40才で滋賀県知事に当選し、3期務めてから衆   議院議員に転身しました。   レイカディア大学は、長寿社会の到来を見越した武村さんの施策の一環だった   のかも知れません。(余談になりますが、私が20年前に滋賀へ越してきたと   き、「21世紀の滋賀を考える」というようなテーマで「知事への手紙」の募   集がありました。そのとき図書券5,000円をもらって以来、武村さんは立   派な人だと密かに感じ入っている次第です。)   設立の趣旨は、高齢者に学習の機会を与えるとともに、地域作りのリーダーを   養成することを意図したもののようです。   当初は選択講座が「園芸」と「陶芸」だけだったみたいで、徐々に追加されて   きました。キャンパスは草津市と米原町の2箇所にありますが、当初から分か   れていたのかどうか、私は知りません。(沿革については入学式のときに説明   があったのかも知れませんが、私は入学式に出席できませんでした。)   現在、草津校は5学科120人、米原校は(陶芸を除く)4学科80人、計   200人、在籍定員は2学年計400人となっています。在籍している学生の   年齢層としては、60才〜70才代後半の人までとかなり幅があります。   男女比はキャンパスと学科によって違いますが、全体としては女性が1/3強   です。(我が陶芸1学年は、残念ながら女性は3人だけですが、その代わり、   入学資格(年齢)を偽っているのではないかというくらい若々しい美人揃いで   す。)
6.入学資格など:    パンフレットによれば、入学資格は「・60才以上・通学に耐えられる健康   であること・地域で指導的な活動を目指す人」となっています。要は学歴や経   歴などに関係なく、「年寄りだったら誰でもいいですよ、暇つぶしにいらっし   ゃい」ということみたいです。ただ、入学にあたっては所属する市町村の社会   福祉協議会に「論文」を提出し、推薦を受ける、という手続きが踏まれます。   (論文というのは大袈裟で、実は400字詰め1枚程度の短い作文にすぎませ   ん。)私に与えられた論文(!)のテーマは、「地域活動でどんなことをして   きたか、またはこれからどのような活動をしようと考えているか」というよう   な内容でした。以前は入学希望者が定員に満たなかったこともあったようです   が、最近は希望者が多くなり、競争率が2〜3倍になっている地区もあるよう   です。私が応募したときに町の担当者から聞いたところでは、既に2倍以上に   なっているということでした。
7.クラブ活動:    一般の大学と同じように、レイカディア大学でもクラブ活動があります。今   年活動しているクラブ(草津校)は次の通りです。   ・囲碁・絵手紙・茶道・書道・篆刻・ハーモニカ・グランドゴルフ・自彊術・    ダンス・卓球・フリーピンポン    クラブ活動への参加は任意ですが、半数以上の人が参加しています。   ちなみに、私は「書道」クラブに参加しています。                   laca11.jpg                      書道クラブ
8.周囲の環境:    私の通っている草津校は大津市との境界に近い所にあり、大津市にある文化   ゾーンに接しています。この文化ゾーンには県立図書館、県立近代美術館など   があり、学校から足を延ばすことができるので便利です(徒歩約15分)。   例えば、午前中の講義「本との出会い」で県立図書館長から紹介のあった図書   を、その日の昼休みに県立図書館へ行って借りることができました。また、陶   芸1学年の自主学習の時間には、県立近代美術館で開かれていた県展の美術鑑   賞にクラス全員で出かけることが出来ました。   laca07.jpg   laca08.jpg       県立図書館             県立近代美術館  
    laca09.jpg   laca10.jpg         公園緑地事務所           埋蔵文化財センター
 私は入学してからまだ2ヶ月余りなので、学生になったことの意義を十分に理解 しているとは言えません。現時点での感想を一口で言えば、大変いい機会をつかま せてもらえたと思っています。必修講座の講義の面白さ、選択講座の作陶の面白さ、 家の外で息抜きできる楽しさ、さまざまな人と知り合いになれる楽しさ、など、貧 乏人の年寄りにとっては貴重な体験になりそうです。それが自分にとってどういう 意味があるのか、卒業した後どんなお返しが必要になるのか、などということはさ ておいて、今は楽しんでおけばいいと構えています。  滋賀県以外の他府県では、年寄り向けにどんな施策がとられているのか、気にな るところです。                           (2003/12/23)   <以下 2004年11月7日加筆>  
 2004年9月9日。卒業式が厳かに行われました。 
 
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 会場は米原駅から徒歩数分の所にある  滋賀県立文化産業交流会館 です。 ここにはレイカディア大学の米原校がありま す。  
←滋賀県立文化産業交流会館  
graduation2.jpg                     卒業式式典  
 草津校と米原校の卒業生と1年生約400人が集合しました。 来賓として 県知事(代理) 副知事(美人女性) 県会議長(代理) 各科講師  他の方が参列されました。卒業生約200人のうち 約1割が2年間を通じて皆出 席だったそうです。  
 
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 2004年10月1日。入学式がありま した。会場は草津校です。入学式は草津校 卒業式は米原校となっているようです。   
 
←草津校での入学式  
 
 
 入学式も卒業式も厳粛(!)な雰囲気でした。学生主体で楽しい雰囲気を盛り上 げることなどは論外で 来賓の挨拶の都度 始めと終わりに一同が席を立って礼を するなど躾教育が徹底しています。足腰の弱った年寄りにとってはややしんどかっ たかも知れません。 入学志願者は少しづつ増えているようです。加えて滋賀県の財政状態は悪化してい るので 卒業後の地域貢献がうるさく言われるようになりました。 学生のパフォーマンスで新入生を迎えたり卒業生を送ったりしてもよいのではない か というような甘い考えは税金の運用者には通じないことなのでしょう。  
 
 
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